思春期外来トピックス

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発達障害かも?中学・高校で馴染めない子のための思春期外来

 

子どもが中学校や高校へ進学したのを機に、急に忘れ物が増えたり、感情のコントロールが難しくなったりして、学校生活に馴染めなくなってしまうケースがあります。周囲から見ると「ただの反抗期」や「やる気のなさ」のように思える行動であっても、実は大人が想像する以上に本人が強い生きづらさを抱えていることは珍しくありません。

小学校までは親や教師の手厚いサポートによって表面化しなかった生まれ持った特性が、環境の大きな変化をきっかけに破綻を迎え、行き渋りや不登校へと繋がってしまうケースは多々あります。こうしたトラブルを前に、保護者様が「自分の育て方が悪かったのだろうか」と家庭内だけで悩みを抱え込み、焦りと孤立感を強めてしまうことも少なくありません。

中高生時期に表面化する急な環境不適応の背景には、本人の努力不足ではなく、発達障害やそれに伴う二次障害が隠されている可能性があります。

本記事では、中学・高校生活への進学で発達障害の特性が表面化する理由や、具体的な心身のサインについて解説します。さらに、愛知県にある当院の思春期外来が実施している客観的な心理検査の役割や、思春期ならではのしんどさを家庭や学校でラクにしていくための具体的なサポート法について説明します。

 

中学・高校への進学で「発達障害の特性」が表面化する理由

思春期外来は、子どもから大人へと大きく変化する過渡期にある中学生・高校生を対象とした、メンタルヘルスと体調不良の専門外来です。小学校までは目立たなかった生きづらさが、中学・高校への進学という環境の節目を機に、急激に適応の難しさとして現れることがあります。これには、中高生ならではの生理的・環境的な要因が深く関係しています。

ADHD(注意欠如・多動症)の特性と忘れ物・衝動的な言動

ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする発達の特性です。小学校時代までは、周囲の大人が持ち物をチェックしたり行動を先回りしてサポートしたりすることで、問題が表面化しないケースが多く見られます。

しかし、中学・高校に進学すると、状況は大きく変わります。部活動の開始、定期テストのプレッシャー、複数の教科ごとに異なる提出物の管理など、高度な「自主性」や「自己管理能力」が求められるようになります。この急激な環境の変化に対し、持ち物の整理や時間管理が苦手なADHDの特性があると、以下のような具体的なトラブルが増える傾向にあります。

・提出物の期限やスケジュール管理が追いつかなくなる
・学校のルールや課題の多さに圧倒され、急に忘れ物や遅刻が目立つようになる
・感情のコントロールが難しく、些細なことで衝動的な言動をとり、周囲と衝突してしまう

毎日のように学校や家庭で叱責される状態が続くと、本人は自信を失い、学校に対する強いプレッシャーから不登校へ繋がることがあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性と「空気が読めない」しんどさ

ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係の構築やコミュニケーションの難しさ、こだわりへの強さなどを特徴とする特性です。思春期を迎えた中高生は自己意識が急激に高まり、「周囲から自分がどう見られているか」に神経をとがらせるようになります。さらに、クラス内での微妙なグループ分け(スクールカースト)や、スマートフォンの画面の向こう側で24時間体制で続くSNS(LINEなど)でのやり取りなど、人間関係のルールは複雑化します。

場の空気や言葉の裏、他人の微妙なニュアンスを読み取ることが苦手なASDの特性を持っていると、こうした密閉されたコミュニティでのコミュニケーションに強い苦痛を感じ、疲弊してしまいます。

・クラスの集団行動や友人との雑談にうまく馴染めず、強い孤独感を抱く
・他人の視線が異常に怖くなり、自分の悪口を言われている気がする
・周囲の目を気にしすぎるあまり、心が疲弊して教室に入ることができなくなる

これらのしんどさは「反抗期だから話さない」のではなく、本人の脳の特性と、複雑化した現代の中高生環境との間でミスマッチが生じているサインなのです。

小学校までは普通だったのに?「隠れ発達特性」という盲点

中高生の発達の課題を紐解く上で注意したいのが、明確な診断基準には至らないものの、日常生活に強い支障をきたしている「グレーゾーン」と呼ばれる状態や、周囲が気づきにくい隠れた特性です。

中学・高校生活になってから限界を迎えてしまう理由

小学校までは「少し個性的だけど勉強はできる優秀な子」であったり、「おとなしくて手のかからない静かな子」であったりした場合、周囲からは何の問題もないように見えています。しかし、思春期に入り、自主的な問題解決能力や空気を読む高度な社会性が求められるようになると、それまで本人の知能や努力でカバーしていた適応の限界を超えてしまいます。

突然学校に行けなくなったり、対話を拒んで自室にこもったりする姿を見て、周囲は「急に変わってしまった」と感じがちですが、実際はお子様自身がずっと以前から違和感を抱え、必死に周囲の期待に適応しようと耐え続けた結果であることが少なくありません。

生きづらさの根っこを知る「思春期外来」の心理検査の役割

子どもが学校生活に馴染めず動けなくなっているとき、その原因を医師の問診だけで正確に判断することは困難です。本人の抱えている生きづらさの正体を正しく突き止めるためには、客観的かつ科学的なデータに基づいた評価が欠かせません。当院の思春期外来では、まずは問診でお悩みをお伺いした後、必要に応じて以下の心理検査を段階的に行っています。

知能や発達特性の凸凹を調べる心理検査(一覧表)

 

心理検査の種類 対象となる主な目的・調べられる内容 馴染めない・行き渋るお子様への具体的なメリット

知能・発達特性の検査
(WISC-V、WAIS-IVなど)

主に知能指数や、生まれ持った知能の発達特性、得意なこと・苦手なことの凸凹を調べます。 本人の「努力不足」や「怠け」ではなく、脳の特性による不適応である事実が分かり、家庭生活や学校での環境調整の具体的なヒントが見えてきます。

抑うつ傾向の検査
(CES-D)

お子様の気分の落ち込みや、うつ状態の強さがどの程度あるのかを数値化して調べます。 環境に馴染めないストレスから、心のエネルギーがどのくらい枯渇しているか(うつ状態の強さ)を客観的に把握し、適切な治療判断に役立てます。

心の状態を捉える投影法検査
(バウムテストなど)

絵を描く、質問に答えるなどの方法を通じて、言葉にするのが苦手な中高生の無意識のストレスを捉えます。 クラスでの苦しさや自分の状態をうまく言語化できないお子様の、言葉にならないSOSを客観的に紐解き、周囲の大人が理解する助けとなります。

 

当院では、適切な時間を守って丁寧な診療を行うため、概ね初診は30分、再診は10分程度とさせていただいております。

客観的なデータを保護者や学校での環境調整に活かすメリット

これらの心理検査を行う最大のメリットは、本人が決してサボっているわけではなく、脳の特性や強い不安によって動けなくなっているのだという事実が視覚化される点にあります。

客観的なデータとして強みと弱みが明らかになることで、保護者様自身の理解が深まるだけでなく、学校側(担任の先生やスクールカウンセラーなど)に対して具体的な配慮を求める際の強力な根拠となります。「時間管理が苦手なため提出物のリマインドを個別にサポートしてほしい」「集団行動に強い疲弊を示すため保健室通学や別室登校を認めてほしい」といった、科学的根拠に基づいた具体的な環境調整・要請への連携がスムーズに行えるようになります。

中学・高校でのしんどさをラクにする家庭と学校のサポート法

思春期の発達特性に伴う生きづらさは、医療機関での治療だけでなく、日々の家庭での関わり方や学校での環境調整を取り入れることで、大幅に和らげることができます。

【家庭での対応】正論によるアドバイスを避け、本人の疲弊に共感する

忘れ物が多い、提出物が期限内に出せないという我が子を前にすると、保護者様はつい「早く準備しなさい」「みんな普通にやっているよ」と正論でアドバイスや叱責をしてしまいがちです。しかし、特性によって「分かっていても行動に移せない」ことで本人が一番傷つき、自尊心を低下させています。

家庭でまず実践したいサポート法は、指示や説教を一度ストップし、本人のしんどさに共感することです。「毎日それだけ学校で気を張って過ごしていたら疲れるよね」「やろうと思っているのにうまくいかなくて悔しいね」と、本人の苦しみをそのまま受け止める言葉をかけてあげてください。家庭が「ありのままの自分を受容してもらえる安全な場所」に変わることで、低下していた心のエネルギーが徐々に回復し始めます。

【学校との連携】心理検査のデータを活用し、個別の配慮を依頼する

学校生活での困りごとに対しては、思春期外来で実施した心理検査の客観的なデータ(得意と苦手の凸凹)をベースに、学校側(担任の先生、学年主任、スクールカウンセラーなど)と具体的な連携を図ることが最も効果的な方法となります。

精神論で「もっと頑張らせます」と伝えるのではなく、本人の特性に応じた個別の環境調整を学校に依頼します。

 

ADHD特性への配慮例

・提出物の提出状況を本人が把握しやすいよう視覚的なリマインダーシートを活用させてもらう
・課題の量を一時的に調整してもらう。

ASD特性への配慮例 ・集団での一斉行動や大勢の前での発表に強い対人不安を示す場合、別室での課題提出や個別での評価を容認してもらう。

このように、医療機関による科学的な根拠を提示することで、学校側も具体的なサポートや配慮を行いやすくなり、お子様が過度な疲弊を避けて登校を続けるための現実的な環境が整っていきます。

 

【まとめ】ひとりで抱え込まず、ともに見守るパートナーとして

中学・高校へ進学したお子様が、環境に馴染めずに対話を拒んだり、問題行動が増えたりする姿を見るのは、親御様にとっても焦りや不安が大きい日々かと思います。周囲に相談できず、ご自身を責めてしまう保護者様もいらっしゃいますが、決してご自身を責めないでください。

中学生・高校生という時期の不適応や生きづらさは、心身の急激な成長のアンバランスさや環境とのミスマッチが原因であり、医療の手を借りて少しずつ紐解いていくことができる問題です。

当院の思春期外来の目的は、無理やり元の学校や集団に復帰させることだけではありません。まずは傷つき失われた自尊心や自我の回復を助け、再び社会のなかで穏やかに過ごせるようになるまで伴走することです。学校復帰だけを選択肢とせず、長期的かつ包括的な視点でお子様をサポートいたします。

なお、当院の対象年齢や対応疾患の規定、初診時に診察をスムーズに進めるための事前メモ(手紙)のご持参についてなど、受診にあたっての大切なお約束事や詳しい診療の流れについては、こちらの【思春期外来・総合案内】を必ず事前にご確認ください。

家庭内だけで抱え込み、焦って出口が見えなくなってしまったときは、どうぞ遠慮なく東海こころのクリニックの思春期外来を頼ってください。私たちは、ご家族全員の不安に寄り添い、お子様が自分自身の足で未来への一歩を踏み出せる日まで、誠心誠意サポートを続けさせていただきます。